INTERVIEW
「不安」を「安心」に変える総合調査業
株式会社トクチョー
代表取締役社長 荒川一枝

調査を通じて企業の信頼性やリスク管理を支える株式会社トクチョー。創業60年を迎えた今も、反社会的勢力の調査や採用調査、与信調査、企業の海外進出サポートなど、多岐にわたる調査サービスを提供し、業界の最前線で幅広い顧客の課題解決を担い続けている。調査員としての豊富な経験を持つ荒川代表に、一般には理解しづらい調査業務の流れや、その本質について語っていただいた。

あらゆる調査を行う総合調査会社
当社は法人顧客を中心に、採用調査や与信調査などの総合調査を提供する会社です。探偵業法に基づいた行動調査(尾行調査)など、専門的な調査も手掛けています。特に近年では、反社会的勢力関連の調査や、人材採用に関わるバックグラウンドチェック、リスク・スクリーニング、企業の不正解決、不貞調査を目的とした尾行調査、さらにマーケティング戦略をサポートする競合調査が主な業務内容となっています。また、コロナ禍を経て、リモート勤務に関連する労務管理の不正調査や、投資先企業の信頼性確認といったご依頼も増加傾向にあります。
創業当時、当社の事業は与信調査と採用調査が中心でした。しかし、お客様が抱える悩みは実にさまざまで、調査対象は1つとして同じものがありません。そのため、お客様の幅広いニーズに応えることこそが、総合調査会社としての使命であると考え、私たちは常に新しいご提案をできるよう進化し続けてきました。創業60年を迎える今も、時代の変化に応じた調査メニューを柔軟に拡充し、あらゆる業種の課題解決に貢献できるよう日々精進しています。
女性調査員として奔走
もともと調査業に従事していた父がトクチョーを立ち上げたのは、私が5歳のときでした。父が仕事をするそばで遊んでいた記憶もあり、調査の難しさや、お客様の悩みが解決されたときの喜びを肌で感じる部分もあったように思います。調査業には早い時期から興味を持ち、自然と「将来は会社を継ぐのだろう」と考えるようになっていました。大学進学が近づくにつれて、父から会社の話をされることはありましたが、進路を強制されることはなく、本格的に調査員としてのキャリアをスタートさせたのは、新卒でトクチョーに入社したときです。当時、20代の女性調査員は非常に珍しく、先輩方には多くのことを教わりました。
特に印象深いエピソードとして、パーティでの尾行調査があります。ターゲットである女性が尾行に気づき、お手洗いで髪型を変えてきた場面は今でも忘れられません。私は女性だったため、その変化に気づくことができましたが、男性だけのチームであれば見失っていたかもしれませんね。また、当時は携帯電話もなく、チーム間の情報共有は他の社員を中継して固定電話で行っていました。現代のような便利なツールがなかった時代に、泥臭く調査を重ねた経験は、調査員としての私の基盤を作り上げてくれたと思っています。

社長であっても「知らないことを知ったふりはしない」
私が会社を承継した当時は、フロアが2階、3階、4階に分かれており、全社員の名前と顔を一致させて覚えることさえ大変でした。さらに、業務に関する具体的な引き継ぎがなかったため、私は「知らないことを知ったふりはしない」と決め、総務部、調査部、営業部など、あらゆる部署に話を聞きに行きました。当時の社員は「新しい社長は、こんなことまで聞いてくるのか」と呆れていたかもしれません。もともと好奇心旺盛な性格だったこともあり、人に尋ねることに抵抗はありませんでしたし、そんな私の姿勢を見た社員たちも次第に、「ただのお嬢さんではないらしい」と感じてくれたようです。私は当時から今も社長室のドアを開けたままにしているのですが、日が経つにつれ、社員たちが気軽に顔を出し、業務の説明をしてくれるようになりました。
代表になって10年以上続けているのが、30分の個人面談です。社員1人ひとりとじっくり向き合うために、食事を共にしながら、仕事や家庭のことなどをざっくばらんに話してもらっています。少数精鋭の会社だからこそ、社員の事情を把握することで、業務体制に反映できることもあるでしょうし、何より信頼関係を深める大切な機会だと思っています。
調査会社で働くやりがい
当社では、依頼を受けた際にまず営業社員がお客様のお困りごとをしっかりとヒアリングし、最適な調査項目を提案します。その後、調査員が実際に調査を実施し、得られた情報をもとにレポートを作成、営業社員へ引き渡してお客様に納品、そしてフィードバックを受けるという流れです。調査員のやりがいは、調査を進める中で、お客様が知らなかった意外な事実や新しい発見をお伝えできることです。たとえば、履歴書に記載されている職歴が実際とは異なっていたり、前職でのトラブルが明らかになることもあります。一方で営業職のやりがいは、直接お客様と接し、調査結果がどれほど有益だったのかを実感できる点です。「調査のおかげでリスクを避けられた」「信頼できる取引先を見極められた」といった感謝の言葉をいただく瞬間こそが、営業社員にとっては最大の喜びと言えるでしょう。
当社の調査結果を通じて、お客様自身が「脇が甘かった」と痛感し、会社の管理体制を刷新するケースも多くあります。つまり、当社が1つの課題・問題を解決することで、会社全体の体制が整い、健全な運営へと導くことができるのです。このような企業様の成長を支える「縁の下の力持ち」としての役割を、私たちは今後も果たし続けていきたいと考えています。
グローカルな視点と人間力で企業成長を支援
お客様には外国資本の法人も多く、海外企業が日本進出をする際の調査依頼をいただくこともあります。反対に、日本企業が海外展開を行う際、海外法人との業務・資本提携を検討する場合には、海外での反社会的勢力チェックや新規スタッフの経歴調査などを通じて透明性や信頼性を確保し、企業様のスムーズな海外進出をサポートすることが私たちの主な業務です。このように国境を超えたビジネスが当たり前となっている今、調査員の多様なバックグラウンドも調査の質向上の一助になると考え、ベトナムから人材紹介を受けていた時期もあります。今後とも「グローカル」の視点を大切にしながら、中立的な立場で精査を行い、お客様にさらなる安心をお届けできればと思っています。
最近はインターネットの普及により、調査にかかる労力が軽減された部分もあります。しかし、膨大な情報の中から「これは」と直感的に見抜く感覚や、不審な点を徹底的に追及する探究心は依然として欠かせません。そんな「ひと」の力を大切にしながら、60年にわたり培ってきた知見とノウハウを駆使し、なおかつアナログな手法(行動調査、内偵調査)とデジタルリサーチを融合すること、これこそが高品質な調査結果を生み出す上で大切にしていることです。
お客様と共に「調査」は進化し続ける
昔、「調査はお客様が教えてくれる」という言葉がありました。お客様の「こんな調査は可能か?」というニーズに応えていく中で、既存の調査手法を改善したり、新しい分野の調査を開拓できるようになるという意味です。創業以来、総合調査業ひとすじで歩んできた当社にとっては、この「調査業務の多様性」を生み出す姿勢こそが、他にはない強みだと考えています。そして今なお、お客様に寄り添いながら、挑戦を重ね、調査の可能性を広げ続けているのです。これからも、若い世代とともに会社を盛り上げながら、エネルギッシュな100年企業を目指し、時代の変化に適応し続けていきます。
新しい一歩を踏み出すとき、人は誰しも不安を抱くものです。だからこそ、その不安を「安心」に変えることが、当社の使命だと考えています。「こんな調査、できるんだろうか?」そう迷ったときは、ぜひお気軽にご相談ください。