INTERVIEW

川崎のソウルフードを全国、そして世界へ。

元祖ニュータンタンメン本舗

代表 五十嵐正悟

神奈川県川崎市を中心に店舗を展開する元祖ニュータンタンメン本舗を運営する株式会社みなもと。創業60周年を迎え、川崎市のソウルフードとして長年親しまれてきたニュータンタンメンを「川崎から世界へ」と意気込むのは、3代目となる五十嵐正悟代表だ。代表就任以降、フランチャイズ展開にも注力する五十嵐代表に話を聞いた。

創業60周年を迎える川崎のソウルフード

私たちは、創業者である五十嵐源吉が昭和39年に創業した町の中華料理店から生まれたニュータンタンメンを商品化し、元祖ニュータンタンメン本舗というチェーン店を地元である川崎を中心に関東エリアで店舗を展開しています。加えて、店舗で使用する自家製麺の製造も行っているグループの会社となります。

現在では、川崎のソウルフードと言われるほど成長したニュータンタンメンは、唐辛子と溶き卵、ひき肉を使用した唯一無二のスープが特徴の新しいジャンルのラーメンです。ニンニクと唐辛子が印象的なスタミナが付くラーメンというジャンルでしょうか。自家製麺となる麺のレシピも門外不出。さまざまな種類の粉をブレンドした新しい麺として、皆さまにご好評いただいています。

初めて食べたときの感動が自分の原点

私自身は、居酒屋などで経験を積み、20年ほど前に入社。生麺やスープ作りを経て店舗に入り、8年ほど前に3代目として代表に就任しました。中学生のときに、祖父が創業者で元祖ニュータンタンメン本舗を経営していることを知り、当時はこれほどおいしいものなんだから、全国展開しているに違いないと思っていました。ですが、関東で20店舗ほどしかないと聞き、高校生のときにはいつか自分が先陣を切って店舗展開をしてこう。この会社を大きくしよう、と決意を持つようになっていました。

創業者の祖父には、いつか継いでほしいと言われていましたが、2代目からは常に「やらなくてもいい。自分の好きなことをやれ」と。そう言われて改めて考えてみたこともありましたが、やっぱりこの会社だと。なぜこの味が全国にないのか。初めて食べたときに、それくらい自分が感動したのが原点です。まだ食べたことのない地域の方にこの味を提供したいという熱い思いが、今も自分を突き動かしています。

全国展開を目指しフランチャイズに注力

代表に就任以降は、フランチャイズ展開にも力を入れるようになりました。私が入社した当時は、いわゆる修行期間のようなものがあり、店舗で皿洗いを1年。その後は麺の製造に携わり、ニュータンタンメンを提供するまでに3年ほど。私自身も皿洗いから始め、店舗のことを覚えてから店長、そして管理職へというストーリーを踏んできました。

本店の味を守るためには必要なことではありましたが、修行期間が長いと離職率も高くなってしまう。料理を作りるという楽しさをいち早く従業員に実感してもらうことが、ニュータンタンメンをさらに広く届けるために必要なことではないか。やりがいのある会社を作りりたい、という想いから社内の研修制度を変え、いち早く自分の店で責任を持ってお客さまにおいしい商品を提供できるフランチャイズ展開のシステムを整えていきました。何年か修行をした方に、のれん分けという形で店舗を展開していたころは、レシピに関しても「見て覚える」といった形でしたが、今はある程度をマニュアル化。よりスピーディーに店舗展開ができるよう変えていきました。最短数カ月で独立することができるよう、オーナーさんには当社がノウハウを提供します。目標は、全国展開。まだ店舗のない地域に、このおいしさを早く知っていただきたいと思っています。

従業員満足度を上げてサービスの向上に

会社としては、創業60周年と歴史もありますので、これまでと変わらずにおいしい商品を提供していくことが一番ですが、昨今は人材不足もあり、従業員満足度を上げることが目下の課題であると考えています。従業員が充実していないと、お客さまに対してもいいサービスができませんから。店舗で大切なことは、おいしい料理を提供することであり、それがもう一度食べたいという一番の来店動機になりますが、それと同時にサービスも重要なことだと考えています。店舗の雰囲気はもちろんのこと、例えばお水のおかわりを注ぎに行くなど些細なことかもしれませんが、気持ちのいいサービスを受ければ、より料理もおいしく感じる。商品のおいしさとサービスは、セットだと思っています。商品のファンになってもらうのは当然ですが、お店のファンになってもらうこと。それが当グループの店舗で一番大切にしていることです。

また、近年ではSDGsに関する取り組みも行うようになりました。麺の製造において生地の端の部分など、どうしても麺として販売できない部分が出てしまっていましたが、それを廃棄せずに活用し、従業員向けの商品を製造しています。従業員への還元という部分では、小さなことですが従業員満足度にもつながっているのでは、と考えています。

地元の方に愛していただける店舗作りを

今後、さらなる店舗展開を目指すなかでは出店先のお客さまに愛される店舗作り、というものも大事になってくると考えています。フランチャイズ先も、できれば地元の方にお願いしたいとも思っています。地元で事業をやられている方なら、その地域のことをよく知っていますし、だからこそその場所のお客さまを大事にしてくださるのではないかと。

やはり私たちは、地元である川崎の皆さまに育てていただいた企業ですから。フランチャイズ展開するにしても、展開先の地域の方に同じように愛していただきたいなと。また、同時に育てていただいた川崎に、恩返ししたい気持ちも持っています。2023年夏ごろからは、子ども食堂を不定期に開催。未来を担う子どもたちへ貢献したいと、川崎市と連携し、市内の保育園の給食に辛くないニュータンタンメンの提供も行っています。

川崎のソウルフードを世界へ!恩返しがしたい

川崎の方にとってはタンタンメンと言えば、当店のニュータンタンメンのようで、お客さまから「担々麺を頼んだらゴマ風味の全然違うものが出てきた」と聞くこともよくあります。本店には3代に渡って来店されるご家族のお客さまも多く見られますし、若いころから弊社の商品に親しんでいただいたんだなと感じます。以前、メディアで紹介された際に、「川崎のソウルフード」とキャッチフレーズをつけていただことから、今ではそれが当たり前のようになっているのもうれしいことです。その言葉通り、川崎の皆さんに長年愛していただいたからこそ今があるんだと感じています。

創業60周年を迎えた際に「川崎から世界へ」というスローガンを打ち立てました。私たちのニュータンタンメンが世界共通の味として認識されるようになれば、川崎の方々にも「自分たちが愛し続けてきたものが世界で!」と誇らしく思っていただけるではないか、という想いも込めたスローガンです。店舗展開を進めるなかでは、「川崎を忘れないでね」とお客さまから冗談交じりで声をかけられることもありますが、やっぱり原点は川崎。地元の皆さんがおいしいと思っているものが、ほかの地域でも食べられるようになり、カップラーメンや袋めんになるなど派生して商品化されることも誇りに思っていただきたいなと。実際、誇らしいという声も多くいただきました。今後も、地元・川崎にはさまざまなところで恩返ししていかなければいけないですし、私たちが店舗展開を拡大することで、より川崎が盛り上がればいいなと考えています。川崎が生んだブランドとして、世界へと飛躍する。世界中の方に「川崎には、こんなおいしいものがあるんだ」と知っていただくことが一番だと考えています。

元祖ニュータンタンメン本舗

代表

1984年生まれ、神奈川県川崎市出身。居酒屋などで飲食業につき、20年程前に「元祖ニュータンタンメン本舗」を運営する株式会社みなもとに入社。工場での勤務や店舗での修行を経て、平成28年11月に同社代表に就任。以降、「川崎から世界へ」を目標に掲げ、地元川崎を大切にしながらも、カップ麺やフランチャイズでの全国展開に力を入れている。