INTERVIEW

「自分らしさ」を形にするアパレルブランド戦略

株式会社This is me

アパレルブランド事業責任者 望月賢人

ユニフォームの製造販売やSNS活用支援、オリジナルアパレルブランドの企画・販売を手掛ける株式会社This is me。現在は、インフルエンサーとのコラボレーションによるアパレルブランドの立ち上げを進めている。「インフルエンサーの自己表現をサポートし、キャリア形成にも貢献したい」と語る事業責任者の望月賢人さんに、ブランド設立に至るまでの道のりと、今後のビジョンをお話頂いた。

「This is me」に込められた想いと事業内容

当社は、「自分らしく世の中に貢献する若手ビジネスパーソンの輩出」を会社理念に掲げ、3つの事業を展開しています。1つ目は、ユニフォームのコストダウン事業です。法人向けの制服や作業着などを、バングラデシュにある当社の自社工場で製造し、コストダウンを図っています。2つ目はSNS事業です。ブランディングやマーケティングに繋がるSNS活用をサポートしています。また、当社も「スマブラで1万円配る人」というアカウントをTikTokで運営し、着々とフォロワー数を伸ばしています。3つ目は、私が担当しているオリジナルアパレルブランド企画・販売事業です。現在はインフルエンサーとコラボレーションしたオリジナルアパレルブランドの立ち上げ準備を進めています。

社名の「This is me」には、「これが私だ」という自己表現を大切にし、社員が胸を張って活躍できる場を提供する意図が込められています。この名の通り、私自身も充実感を持って仕事をしていますし、他の社員の浮かない顔を見たことがありません。社員同士はお互いに尊敬し合い、厳しい上下関係もなく、まるで家族のような仲です。これも代表の原田が社員のことを最優先に考え、日々細やかな気配りをしてくれるおかげだと思っています。

ユニフォームのコストダウンからアパレル事業へ参入

当社のアパレル関連事業は、代表の原田が服好きだったことからスタートしました。しかしバングラデシュの自社工場を利用して服を製造する場合、最小ロットは2,000着。個人のアパレルブランドをいきなり立ち上げるにはリスクが高いと感じました。そこで着目したのが、法人向けのユニフォームです。既存のユニフォームは中国製が多いため、30~40%のコストダウンをメリットとして提示することで、当社への発注数は伸び、事業は順調に拡大しました。

アパレル事業の第一歩を踏み出した後に動き始めたのが、インフルエンサーとのコラボレーションブランドです。インフルエンサーという職業は、人々の注目度によって大きく左右されるため、将来への不安を感じている方が多くいらっしゃいます。しかし、ファッションに関しては年齢に関係なく、新たなフォロワーを獲得できる可能性があります。「この人のファッションが好き」と1度思ってもらえれば、長期的なファンになってもらえる可能性も高いでしょう。インフルエンサー本人の魅力だけでなく、ファッションを通じてその人のセンスを発信することで、彼らのキャリアはさらに拓けると私たちは考えました。

インフルエンサーのこだわりが詰まったコラボブランド

現在はアパレルブランドの名前が決定し、2025年の発売に向けて精力的に準備を進めている最中です。インフルエンサーのこだわりを反映させるため、生地や色、デザインなどについて細かく指定を受け、サンプル作成とリテイクを繰り返しています。しかし、最も時間をかけたのは、服作りそのものではなく、事前の打ち合わせでした。「何が好きか」「どういう性格か」「将来はどうなりたいか」などを約3カ月かけて深堀りし、インフルエンサーの本質を引き出してきたのです。私自身「服作りはここから始めるのか」と驚いた一方で、本人のセンスが全面に発揮されたブランドを確立するためには、たしかに必要なプロセスだったと今は思います。

このように、インフルエンサーと密に協力できているのは、当社がSNS事業を運営していることや、独自のアカウントを運営していることが大きな要因だと思います。もし当社がSNSに精通していなければ、インフルエンサーとwin-winの関係を築くことは難しかったでしょう。また、ユニフォームのコストダウン事業を先に展開していたからこそ、服作りの実際やバングラデシュの生産者の現状について理解が深まり、その経験が現在のアパレル事業の基盤となりました。オリジナルアパレルブランド事業は当社の長年の夢でしたが、SNS事業やユニフォーム事業とのシナジーを経て、最適なタイミングで実現できたと感じています。

すべてのビジネスは1対1の関係から始まる

当社の事業内容はBtoBが基本ですが、私は「仕事とは、元を辿ればCtoCである」と考えています。ユニフォーム事業をスムーズに始められたのも、代表が地元の友人に「ユニフォームのコストダウンに興味はないか」と声をかけたことがきっかけです。人との縁がビジネスチャンスに繋がることを実感した瞬間でした。また、当社はベンチャー企業であるため、新規のクライアントからは信頼を得られづらい傾向があるのですが、事前に担当者の方と密にコミュニケーションを取っておいたことで、「This is meなら大丈夫だよ」と間を取り持って頂き、契約に至ったこともあります。どんなビジネスにおいても、大切なのは目の前の1人を大切にすることです。当社はもともと人と話すことが好きな人材が集まっていますが、人とのご縁を大切にする代表のもとで働いていることもあり、自然とコミュニケーション能力が磨かれ、それはCtoCの関係性を築く上でも、当社にとってかけがえのない強みになっています。

服が持つグローカルの可能性

服は、全世界共通で生活に溶け込んでいるアイテムです。そして、国や性別、宗教に関係なく、自分自身を表現できるという意味でも非常にグローバルなアイテムだと思います。一方で、国や地域ごとの習慣や気候、宗教に配慮した製品を提供できるという点では、ローカルな側面にも寄り添えるアイテムとも言えるでしょう。1人の人間が活躍できる場には限りがありますが、服であれば、より広く、そして生活の深い部分までするりと入り込める余地があると私は感じます。今後はファッションが持つグローバルとローカル、双方の可能性を大切にしながら、関わるすべての人々が幸せになれるアパレル事業を世界に向けて展開し、着る人が自然と笑顔になるような服を届けていきたいですね。

ファッション事業においては、生産者との密接な繋がりが欠かせません。当社はユニフォーム事業を始めた頃から、バングラデシュの工場に何度も足を運び、現地の労働環境や給与事情に配慮しながら、平均以上の待遇を提供してきました。さらに、貧困や格差社会の改善に貢献したいという想いから、1着作成するごとに3円をバングラデシュへ寄付をする活動も行っています。SDGsの観点では、ファッション業界が抱える大量廃棄問題が重要な課題として注目されていますが、当社では生地を無駄にしない製品の開発に取り組み、環境に配慮した製品を国内で広く普及させることで、SDGsの実現に少しでも寄与できるよう努めています。このように多角的な視点でアパレル事業を進められているのは、やはり生産現場を直接見た経験が大きく影響しているのでしょう。常に生産者の顔を思い浮かべながら、より良い事業の推進を目指しています。

多彩なブランド展開を通じて「これが私」を発信

直近の目標は、2025年の始動に向けて、インフルエンサーとのコラボブランドを確立させることです。また、新たに名乗りを上げてくださっているインフルエンサーの方も数名いらっしゃるため、インフルエンサー×アパレルブランドをプロデュースする新会社の設立も視野に入れています。このビジョンを実現するためには、私自身がアパレル業界についてさらに学びを深め、業界内でのネットワークを一層広げていく必要があるでしょう。周囲の方々から「君ならいいよ」と信頼される存在となり、強固なCtoCの関係を築くことが、事業を円滑に進めるための鍵になると考えています。

今後はファッションだけでなく、家具やフレグランスなど、こだわり抜いたコラボレーションアイテムを展開し、多くのファンに共感して頂ける多彩なブランドを創り上げることで、インフルエンサーの第二のキャリア形成にも貢献したいと思っています。「これが私だ」と胸を張って日々働く私たちだからこそ、インフルエンサーの魅力的な自己表現を全力でサポートできるはずです。

株式会社This is me

アパレルブランド事業責任者

大手インフラ企業に勤務した後、顧客満足を最優先とする事業の展開を目指して独立。当時、ビジネスの相談相手だった原田一矢氏(株式会社This is me代表)の人柄と理念に感銘を受け、同社に入社。新事業であるオリジナルアパレルブランド企画・販売を担当。