INTERVIEW
清掃・メンテナンスから広がる健康と笑顔
株式会社タスクリエイト
代表取締役 成田佳史

2016年に設立し、清掃・ビルメンテナンスをメイン事業として全国展開を視野に成長中の株式会社タスクリエイト。独自開発の薬剤を用いたカビ取りや病院清掃など、医療現場や日々の暮らしに欠かせない分野で事業を拡大している。代表取締役の成田さんが繰り返し語ったのは「人を笑顔にしたい」という言葉。顧客、社員、家族──そして世界へ。その想いの原点と今後の構想をお話いただいた。

清掃の枠を超える、総合ビルメンテナンス
株式会社タスクリエイトは、ビルメンテナンスを中心とした事業を展開しています。中でも特に力を入れているのが、自社開発の薬剤を用いたカビ取りサービス「メディクリーン」です。その背景には、従来の業務用薬剤ではどうしてもカビの根を絶つことができず、十分な効果が得られないという課題がありました。それではお客様に申し訳ないと、半年をかけて試作を重ね、安全性と効果を両立させた薬剤を完成させたのです。毒劇物ではなく、一般的な製品と同じように使える一方で、カビを菌核から分解除去できる点が大きな強みです。
さらに、エアコンメンテナンスも主力事業の一つです。単に本体を交換するのではなく、パーツ交換や補助金制度を組み合わせながら、お客様にとって最も負担が少なく、かつ効果的な方法を提案するのが私たちのスタイルです。また、病院清掃にも特化しており、医療現場の厳しい基準をクリアしながら、日常清掃から専門的なメンテナンスまで幅広く対応。現在は全国展開を視野に入れ、事業を拡大中です。独自のカビ取り剤、お客様のニーズに寄り添った提案、そして医療現場専門の清掃サービス。こうした強みを組み合わせることで、私たちは「オンリーワン」と胸を張れる事業を展開しています。
「娘を守りたい」から始まった挑戦
起業のきっかけは、幼い頃から喘息とアトピーを患っていた娘の存在でした。薬を飲んでも、空気清浄機を置いても改善が見られず、夜中に咳き込み苦しむ姿を見ては、心から何とかしてやりたいと願っていました。そんな時、カビやホコリが喘息の大きな要因になると知り、専門業者にエアコン内部や天井の清掃を依頼したのです。すると娘の咳は劇的に軽減し、皮膚のかゆみも徐々に収まっていきました。「目に見える汚れだけでなく、カビやホコリも人体に有害なんだ」と実感したこの出来事は、私の人生の転機となり、「同じように悩んでいる人を救いたい」という思いへと変わっていきました。これがタスクリエイト創業の原点です。
しかし、現実は甘くありません。独立してすぐは契約がまったく取れず、昼は歯科医院、夜はコンビニと昼夜問わず飛び込み営業を続けましたが、半年が経っても成果は出ませんでした。いくら提案しても、響かず、断られてしまう。その積み重ねに、自分の力不足を嫌でも思い知らされ、涙が出るほど悔しかったのを覚えています。「起業は失敗だった」という考えが脳裏をよぎり、心が折れそうになる瞬間も何度もありました。しかしすでに独立してしまった以上、このままでは終われません。腹をくくり、もう一度自分と真剣に向き合うことにしたのです。

矢印を「自分」から「相手」へ
流れが変わったのは、「自分の幸せ」ばかりに目が向いていると気づいた時でした。「成功したい」という思いが先走り、お客様の悩みや本音に耳を傾けていなかった――それが成果の出ない最大の理由だと悟ったのです。そこで「もし自分がお客様ならどうしてほしいか」を
徹底的に考え、どのようなサービスなら受けたいかをお客様へヒアリングするようにしました。矢印を「自分」から「相手」に向けたことで、喜ばれるサービスの構築と信頼の獲得につながり、少しずつ契約が取れるようになっていったのです。
たとえばエアコン工事なら、本体を丸ごと交換すれば売り上げは伸びます。しかしお客様が本当に望んでいるのは、できる限りコストを抑えて現状を改善すること。そこでパーツのみの交換や補助金制度を組み合わせ、負担を最小限に抑える提案を始めたのもこの頃でした。展示会では「エアコンフィルター清掃650円」という業界最安値を掲げ、必死でチラシを配り、1日で80件の契約を獲得。また、当時から「医療現場の清掃」を手がけたいという構想はありましたが、病院への飛び込み営業ではなかなか契約につながりませんでした。しかし介護施設との取引からスタートし、実績を積み上げることで関連病院を紹介していただくという流れが確立されていったのです。このように紆余曲折はありましたが、サービスの質には常に自信がありました。その上で、お客様と真摯に向き合うこと、そして「やるしかない」という覚悟が私を前へ進ませてくれたと思っています。
「全ては、明日の笑顔の為に」
私が経営で最も大切にしているのは、ミッションとして掲げている「全ては、明日の笑顔の為に」という言葉です。お客様はもちろん、社員も、その家族も笑顔になれる会社でありたい。どこか一つでも笑顔が欠けているなら、それは事業の在り方が間違っている証拠だと考えています。
お客様に対しては、「また会いたくなる会社」であることを意識しています。価値観が目まぐるしく変化する今、ニーズに沿ったサービスを展開できなければ企業は淘汰されてしまいます。だからこそ「私たちの事業」を押し出すのではなく、お客様の困りごとに耳を傾け、オーダーメイドで最適なプランを提案する。そうすることで「次もお願いしたい」と言っていただける関係を築けるのです。社員に対しては、家族を大事にできる環境を整えることを心がけ、子どもが風邪を引いたり、家族に何かあれば遠慮なく休むように伝えています。また、仕事は人生の大部分を占めるものです。だからこそ「つまらない8時間」ではなく「成長を感じられる8時間」にしてほしい。そのためにも、社員一人ひとりの個性や強みを尊重しながらコミュニケーションを取り、思い切り力を発揮できる場をつくることを常に意識しています。こうした取り組みを通じて、社員の家族が「タスクリエイトに入ってよかった」と思えれば、社員自身も胸を張って働ける。そうした好循環こそが、お客様の笑顔につながると信じています。
ローカルから未来の子どもたちへ
私たちの事業の出発点は、常に“ローカル”にあります。お客様や社員、その家族など、目の前の人を笑顔にする。その積み重ねこそがタスクリエイトの基本であり、“グローバル”への挑戦はその延長線上にあります。私は「失われた30年」を生きてきました。景気のいい日本を知らない世代だからこそ、日本を元気にしたい。そのためには外貨を稼ぎ、経済に還元することが重要です。インドネシアやタイ、ベトナムなど高温多湿のアジア圏ではカビに悩む人が多いため、私たちのカビ取り剤を広めることで現地の人々の健康を守りつつ、日本の競争力回復にもつなげたいと考えています。特にアスペルギルスのように命に関わるカビを減らすことは、世界的にも大きな意義があるはずです。
こうした取り組みを進める理由の一つが、「未来の子どもたちを幸せにしたい」という想いです。自分たちの生活を豊かにするだけでなく、環境問題やSDGsにも向き合い、持続可能な社会をつくることは、今を生きる大人の責任だと思っています。そしてゆくゆくは、売り上げ100億円が目標です。これは単なる数字上の目標ではなく、より多くの人を笑顔にするための指標です。高齢化の進む日本で、医療・福祉の役割は日々重要度を増しています。その現場に関わる方が本業に専念できるよう、私たちはビルメンテナンスの分野から皆さんを支えていきたい。そして出会うすべての人を幸せにし、未来の世代に誇れる会社であり続けたい。そのために、挑戦を続けていきます。