INTERVIEW
『ヒト』を大切にし、逆境を生き残る。
株式会社NMR流通総研
代表 中坊崇嗣
経営コンサルティング、人材コンサルティング、そしてマーケティングコンサルティングなど、企業コンサルティング全般を手掛ける株式会社NMR流通総研。少子高齢化、人口減少、そして新型コロナウイルス。「逆境」の今、中小企業が生き残るために必要なこととは。同社代表・中坊崇嗣さんに話を伺った。
これからは『人』を大切にする企業が伸びる時代
少子高齢化と人口減少が進み、働き手が減少している昨今、日本の多くの企業が厳しい状況に陥っていると実感しています。このような働き手の確保が困難な時代の中、「選ばれる」企業でありつづけるためには、企業にとって宝である“『ヒト』をいかに活かし、大切にできるか″が非常に重要なのではないでしょうか。NMR流通総研では、企業ビジョン策定、人事評価・等級制度・目標管理制度の導入を通じ、組織で働く人の「やりがい」「満足度」「愛着」を高め、社員と会社がwin-winな関係を築き、強固な組織を構築するサポートを行っております。
ビジョンを共有し、強固な組織へと
まず初めに、誰もが知るような大手電鉄グループ会社の企業理念構築に携わった際の例を紹介させていただきます。その企業には当初、親会社が大規模であったためか、社内に「安泰だ」「チャレンジする必要はない」といった雰囲気が漂っていました。そのような中、コロナが出現し、一気に会社の業績が傾きかけたのです。「これはまずい」という状況に誰もが危機感を覚えていたでしょう。そこで「ピンチを乗り越えるために、チャレンジする社風に変えていきたい」と、社長様からご相談をいただきました。私は、トップと現場社員が一丸となり、ともに考えながら企業理念を構築することを提案させていただきました。その企業が大切にするべき価値観、経営陣の想い、そして現場の想いを全員で共有することは、強固な組織を作るために必須だと考えます。トップのみが考えた経営ビジョンでは、社員はどこか他人事のように感じてしまうでしょう。そしてそれらの想いを「見える化」し、同じ方向を向いて歩むのです。企業理念の導入前に行ったアンケートでは、6割の社員は企業理念の再構築に前向きでしたが、残りの4割はそうではありませんでした。しかし、全社員で複数回のワークショップを開き、最終的に企業理念が完成したあとに実施したアンケートでは、満足度100%という結果が得られたのです。経営陣と社員が同じ方向を向いて、新たなスタートを切ることができた一つのターニングポイントになりました。
社員の働きを「見える化」。活かし、還元する。
会社全体のモチベーションを向上するためには、企業理念構築だけでなく、組織が活性化する等級制度と人事評価制度、それに連動した目標管理制度も必要だと考えます。しかし多くの中小企業では、それらを実施している企業はごく一部と言わざるをえません。社長の独断や「なんとなく」な思いや「さじ加減」で、社員の働きが評価される場合が一般化している現状ではないでしょうか。人事評価制度には4つの目的があります。1つ目は、社員の現状を把握し、得意を活かせる部署に配置することです。組織で働く「人」という宝の力を活かし、全員が得意なことを担うことができれば、非常に強い組織へと成長することができるからです。2つ目は、人材教育計画への活用です。社員が業務のどの部分に課題を抱えているのかを把握することで、本人が効果的にパフォーマンスできるよう、本当に必要な教育計画を練ることが可能になります。そして3つ目は、社員の頑張りを正しく処遇・給与に反映させること。最後の4つ目が、「会社はみなさんの働きをしっかり見ていますよ」と理解してもらえるよう、社員に感じてもらうきっかけを作ることです。社員の頑張りを認め、「自分は会社にとって大切な存在だ」と認識してもらうことで、よりモチベーションを高めることができるのです。
立ち位置を確かめる等級制度で、次の目標を明確に
等級制度は、次に目指すべきステップを明確にする手段となります。実際に弊社のクライアント様の中でも、約8年前に人事評価制度導入をサポートさせていただいた企業様がありました。導入当初は、社員さんのモチ―ベーションも大幅にアップし、定着率も向上、順調な駆け出しだったのですが、導入から8年後には形骸化してしまったのです。そこで次のステップとして、新たに等級制度の導入と人事評価制度・目標管理制度の再構築をサポートさせていただくことになりました。1等級から10等級まで設定し、社員それぞれが「自分が今どこのステップにいるのか」「次に目指すべき場所はどこなのか」を明確化していったのです。人事評価制度と等級制度、そして給与体系を連動させることで、個人のスキルをより詳しく把握し、育成環境の改善、スキルアップ、モチベーション向上を図ることができたと感じています。
コロナにより労働者の意識が変化。人材採用と定着がより難しい時代に
4年前に出現した新型コロナウイルスという未曽有の事態によって、世の中の価値基準や働き方が大きく変化しました。私たちも漏れなくコロナの影響を受けた会社です。大人数での研修やマーケティング調査の事業も展開しておりますが、それらの仕事がほぼすべてストップし、これまでのやり方を大きく変えなければいけないという状況に陥りました。私たちのクライアントさんも同様に、コロナという不測の事態により、これまでの常識が一瞬で覆ったことを体験しました。企業で働く社員さんたちは「果たして企業勤めでよいのだろうか」「この会社に居続けるべきなのか」と、働き方に対する価値観が大きく変化し、不安を抱くようになった方も多いのではないでしょうか。そのことにより、退職を希望する社員が増加するなど、これまで以上に採用が難しくなったり、入社したとしても定着率が下がってしまったりと、企業の財産である人材の確保にも大きな影響が出ます。このような困難な時代だからこそ、企業ビジョンを確立し、社員の納得感と満足度が高まる等級制度や人事評価制度、目標管理制度の導入の重要度が増しているのではないでしょうか。これらを実施するのとしないのとでは、人材採用・育成・定着に大きく差がでてくると確信しています。
お客様と伴走し、夢と目標を実現させる会社でありたい
私たちも日々、お客様から相談を受けるなかで、今まで企業が取り組んでこなかったような課題や問題に直面することも増加しました。これまでの成功事例だけでは通用しない世の中になってきているということでしょう。そんな厳しいなかでも成果を出していくためには、お客様と本音でしっかりと語り合いながら悩みや課題を抽出し、その会社、時代、状況に合わせた戦略を練ることが非常に重要だと考えています。ときには困難な壁にぶつかることもあるでしょう。そんなときも、共に悩み、考え、伴走しながら壁を乗り越えていかなければいけません。そうすればきっと、これまでの世の中には存在しなかったモノやサービス、解決策を生み出していけると信じています。
世界に「日本流」マーケティングを
弊社の今後の目標は、日本国内企業の活性化をサポートさせていただくとともに、15年前から実現したいと構想していた海外進出の実現です。中国をはじめとし、アジアには「ジャパンブランド」に強い関心を示す企業が多く存在します。そのような企業へ向けて、日本の販売戦略や組織づくり、ブランディングを発信していきたいと構想してきました。一方で、日本国内の活性化にも引き続き着手していく所存です。大阪には60年前に開発された「ニュータウン」と呼ばれる場所が存在しますが、現在は少子高齢化が進み、人口が減少しています。そのような場所の利便性を高め、少しでも活気を取り戻してほしいとの想いから、大阪府や堺市への提案も行ってきました。日本国内のまちづくり、そして世界への発信という双方の観点から、企業、街、人に貢献していく企業として成長し続けていきたいですね。