INTERVIEW

創業110年の源となる、未来を創る人財育成。

DAIMEI GROUP

代表取締役社長 山口徹

2024年で創業110周年と長い歴史を持つDAIMEI GROUP(以下、DAIMEI)。木彫看板の製造・販売から1955年に世界で初めてテレビのブラウン管マスクの射出成形に成功したことをきっかけに、長年テレビ関連を主力事業にしていた同グループだが、年々短くなるビジネススパンに対応するため、人の育成に力を入れている。「人財の育成を通して未来を創っていきたい」という代表取締役社長の山口徹氏に話を聞いた。

ニーズに対応することで事業幅を拡大

1914年に木彫看板の製作販売を目的に、個人事業としてスタートしたDAIMEIですが、その後主力商品を金属銘板、セルロイド銘板へと移し、1955年に世界初のテレビブラウン管マスクの射出成形に成功。家電業界にビジネスを広げ、デザインから金型、成形、二次加工(塗装・組立)までの一貫生産体制を武器に、現在では自動車やアミューズメント業界にも事業を拡大しています。工業用プラスチックの製品製造が主力事業ではありますが、近年では自社ブランド商品の開発にも力を入れ、機能的な価値だけでなく情緒的価値も大事にした心が満たされるインテリアや雑貨を展開しています。

当社の一番の強みは、お客様のあらゆるニーズに対応できることでしょうか。BtoBに関しては、お客様に言われたことだけをそのまま実行するのではなく、本当に望んでいるものは何か。潜在的に抱えているテーマや課題をヒアリングして、解決方法をご提案するようにしています。また、デザインから二次加工(塗装・組立)までの一貫生産体制も大きな強みです。プロセスが分かれているとどうしても自己完結型のビジネスになってしまいがちです。例えば、当社では金型を作っていますが、その後ろには成形部門があります。成形部門というのは、言ってしまえば金型部門のお客様。自分達が作りたい金型だけを作って終わりにしてしまうと後工程の成形部門で使いづらいものになってしまう可能性もあります。同じ社内にあるからこそ、後工程のことを考えたスムーズなものづくりができているのでは、と考えています。

廃棄を減らし環境への配慮にも注力

主力事業がプラスチックの製品製造ですから、環境への配慮にも力を注いでいます。ただ我々の商品というのは耐久消費材が多く、ディスポーザブル商品ではないのですが、とは言ってもやはり一般の方々は細かい違いは分からないという方も少なくありません。我々としては、きっちりとリサイクルすることで廃棄を減らす。業界に先駆けて取り組むべきだろうと実行に移しています。大手企業さんが音頭を取られているものに参加することもありますが、製造工程で出てきたものを活用するなど、独自に取り組んでいることも多くあります。自社商品に関しては、従来のプラスチック製品に自然由来の原料を含むバイオプラスチックを使うなど、環境に優しい商品も提供しています。

家電から自動車、アミューズメント事業に

創業者は私の曽祖父にあたる人物です。木彫看板から始まり、その後金属銘板に着目し商品を開発。見事にその読みがあたり、金属プレートが主力の事業になったと聞いています。戦争で真鍮が手に入らなかったことから、セルロイドでも同じものが作れるのでは、と考えセルロイドプレートを提供するようになった後、1954年にはラジオのダイヤル盤の射出成形化。そして、それが1955年のテレビブラウン管マスクの射出成形の成功に繋がります。家電から自動車、アミューズメント業界へと主軸を移しながら事業を展開してきましたが、私が入社した頃は家電事業が8割ほどを占めていた時代でした。前職で自動車の半導体に関するマーケティングに従事していたことから、自動車関係の事業が安定するだろうと考えていましたが、自動車業界というのは非常に細かいことを要求されます。簡単に言いますと、製品の最終品質にこだわるのではなく、なぜ品質の良いものができるのか、そのエビデンスが欲しいと言われるわけです。

当時、それがなかなかできずお客様にご迷惑をおかけしてしまったことがありました。全社を挙げて、そのリカバリーに向き合った結果、そのお客様には最初は怒られましたが最終的には「よく頑張った」とご評価いただき、今でも良好な関係を築くことができています。我々としては最終製品が高品質なら構わないのでは、という考えでしたが、お客様からするとエビデンスがしっかりと管理されていることが分かって初めて良い商品だと思えると。そういう認識の違いを我々が理解するまでに時間がかかりました。この経験が、今の強みであるしっかりとお客様のニーズを捉える、ということに繋がっているように思います。

企業理念は成功への方程式

とはいえ、私1人では何もできなかったでしょう。やはり一緒にやっていきましょうと言ってくれる社員がいてこそ乗り切れたのだと思っています。入社当時はまだ先代も健在でしたし、創業家の4代目として見られることも多く、先代の死去に伴い急きょ代表に就任した時も、最初は社員を束ねることも難しく苦労もありました。その中で重要だと感じたのは、企業理念です。理念を中心にした組織を作り上げるということには今も力を入れ続けています。理念というのは、生きていないと意味がないもの。ですから、私はなぜその理念が生まれたのか、当社のヒストリーを紐解いていくことにしました。

金属からセルロイドのプレートへと事業転換したことで、将来の顧客を作り、その時の資金で家電業界へのさらなる事業展開が可能になりました。おそらく当時は2代目社長の時だと思いますが、技術商品の持続的創造が将来に繋がるのだということを身に染みて感じていたはずです。そういったものが理念には詰まっています。当社の理念は、成功への方程式のようなものです。これを繋げることが、さらなる未来、この先の100年に繋がっていくのではないかと考えています。

「最高経営方針」と「3CS」を大切に

当社の理念は「最高経営方針」と「3CS」を軸にしています。「最高経営方針」には三つの理念があり、一つ目は人格を尊重し、機会均等、人間平等の精神に徹し、「人を生かす」企業であること。そして二つ目は、常に改善、開発を進め技術商品の持続的創造に徹すること。最後の三つ目は、弾力経営体制に徹し、硬直化体質にならぬこと。一方の「3CS」は、顧客満足(Customer satisfaction)、社員満足(Colleague satisfaction)、会社満足(Company satisfaction)の頭文字をとったものです。

その中でも私は、「人を生かす」企業という部分に重きを置いています。ブラウン管マスクの射出成形の成功からテレビ関連が主力事業になりましたが、そのビジネスは2003年まで。その後、薄型テレビへと移るも、コスト削減のため日本での生産は9年で終了しました。ビジネススパンがどんどんと短くなる中、会社を存続させるためには、新規事業を創造し続ける必要があるわけです。昔から三流は金を残し、二流は事業を残し、一流は人を残すと言いますが、事業を創造できるのは「人」であるため、当社では人財育成に力を入れています。当社には、年齢や役職を問わず意見を言い合える風土があり、ここに魅力を感じ入社を決める方が多くいらっしゃいます。従業員1人が失敗したからといって、会社が傾くことはありません。創意工夫を重ねて変えていこうという精神を持って、行動し挑戦することを推奨しています。未来を創造し、イメージできる人が今後活躍できる人財ではないかと思っています。

150年、200年と続くための人財を育成

グローバルな事業展開というのは、我々にも必要なことだとは考えていますが、まずは国内で足場を固めてから、という気持ちが今は大きいですね。現在の事業からスピンアウトすることでグローバル展開ができれば、と思っています。ただ、そこには新しいアイデアが必要不可欠です。そのためにも、挑戦を恐れず建設的なディスカッションができる組織でありたい。社員にも俯瞰的な視野や(を)気付きを得られるよう、社外のセミナーや海外視察などを促進しています。

110周年を迎えられたことは、偏にその時代ごとにお世話になった皆様のおかげです。私の役目は今後さらに150年、200年続く会社に変えていくことだと考えています。時代ごとに理念に立ち返り、その時代にあった解釈で対応していきたい。そして、「人を生かす」企業として将来を想像し、創造できる一流の人財を育成していきたいと考えています。

DAIMEI GROUP

代表取締役社長

1969年生まれ。大阪府出身。小学校高学年から中学校卒業までの6年間、父の仕事の関係でシンガポールで過ごす。1993年 同志社大学大学院工学研究科を卒業後、日系電器メーカーを経て、1997年に日本フィリップス半導体事業部(現 NXPセミコンダクターズ)に入社。システムマーケティングとして、オートモーティブ分野の顧客を相手に新規ビジネスの立上に従事し、カーメーカー、Tier1メーカーから数々のデザイン・インを獲得する。2004年6月DAIMEI GROUPに入社し、2005年2月代表取締役社長に就任。